“副業禁止”の法的効力とは?実際の裁判で争われた判例が後押しする副業解禁への布石

どうしても副業したい…。でも就業規則に記載される”副業禁止”の文字にビクビクして一歩を踏み出せない。

以前のわたし自身が上記の悩みを抱えていました。

そこで、「就業規則における“副業禁止”規定の法的拘束力」を明らかにするため、一次情報の調査を行いました。

過去の裁判例を精査したところ、きわめて興味深い(意外な)判決が下されていることが分かりました。

  • “副業禁止”の就業規則の効力って絶対的なモノなの…!?
  • “副業禁止”でバレたら懲戒免職になってしまう…!?

この記事では、無許可で副業することに対する上記のような問いについて、過去の裁判判決を根拠とした法的見解を紹介します。

本記事で分かること
  1. 基本的に副業はOKとされるべき
  2. 副業制限には「合理的な理由」が必要
  3. 本業に悪影響を及ぼす副業は絶対NG

\ バレずに副業したい方向けの情報 /

目次

厚生労働省『副業・兼業の促進に関するガイドライン』で紹介された判例

厚生労働省が作成・公表している『副業・兼業の促進に関するガイドライン』資料では、

就業時間外の自由利用を原則とし、労務提供や企業秩序に支障がない限り副業の全面禁止は合理性を欠く

と複数の判例を引用しています。

労働者にとってなんと心強い見解を紹介してくれたのか。副業解禁に向けた厚生労働省の取組の本気度が伺えます。

すごっ!

まずは、判例を紹介していきましょう。
主に、以下の2点が参考になります。

  • 東京都私立大学教授事件
    (東京地判平成20年12月5日)
  • マンナ運輸事件
    (京都地判平成24年7月13日)

① 東京都私立大学教授事件

東京都私立大学教授事件は、「副業許可制への違反に対する判決」です。

大学教授が無許可で副業し、大学講義を休講したことを理由として行われた懲戒解雇処分に対して争われた裁判です。

副業希望者の支えになる画期的な判例です

判例は、副業は夜間や休日に行われており本業への支障は認められないことから「解雇無効」とされました。

判決では以下のように述べられたようです。

兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから、兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼職(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。

東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)
出典:厚生労働省:副業・兼業に関する裁判例

つまり、

プライベートの時間の行為であれば、例え副業許可制に形式的に違反したとしても、本業の勤務先に悪影響がない程度の副業であれば、副業禁止の就業規則には実質的に違反していないものと解釈すべき

と言ってるんですね。

そうですか、そうなんです!
本業に悪影響を及ぼさなければ、副業をしても規則に実質的に違反しないんだね!

これ、裁判の判決ですからね!
法律のスペシャリストが下した結論です。

② マンナ運輸事件

続いて、マンナ運輸事件は「副業申請の不許可」に対して争われた裁判です。

副業の許可申請を4度にわたって不許可したことについて争われた2012年の裁判です。

プライベートの自由時間の考え方です。

判決では、

合理的な理由がない限り、プライベートの時間に副業することは許容されなければならない

と結論づけられました。

具体的には以下のように述べられています。

労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許されなければならない。

もっとも、労働者が兼業することによって、労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるものと解するのが相当である。

マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)
出典厚生労働省:副業・兼業に関する裁判例

つまり、

「副業制限はあくまで例外的、合理的な理由がない限り副業は許可されるべき」

という判決ですね!

使用者側が「副業を制限できる合理的な理由」については後述します。

内閣府会議資料が示す法的見解

続いて内閣府の会議資料の紹介です。

2023年12月、「副業・兼業の円滑化」について討議された内閣府の会議『第3回働き方・人への投資ワーキング・グループ』の資料で、副業・兼業に関する法的見解が示されました

結論として、

既にほとんどの副業・兼業は法的に認められている

と紹介されています。

上記の結論の背景にある法的根拠には、

  • 労働法が適用される範囲
  • 日本国憲法で保障された職業選択の自由の適用範囲

の2つがあります。

プライベートの時間は基本的に労働者の自由という解釈です

内閣府の会議資料の詳細は以下をご確認ください。

副業・兼業の一律禁止は無効

  • 裁判例や学説においては、勤務時間以外の時間をどのように過ごすかは基本的に労働者の自由であることが繰り返し指摘されており、副業・兼業の禁止は原則として無効であると示されていた。
    • 「会社の職場秩序に影響せず、かつ会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の副業・兼業は禁止の違反とはいえない」(菅野和夫「労働法(第12版)」)。
    • 「労働時間外の時間をどのように利用するかは労働者の自由であり、その時間に自己の労働力を利用する自由も職業選択の自由(憲法22条1項)によって保障されている。したがって、兼職は原則として労働者の自由である」(土田道夫「労働契約法(第2版)」)
  • したがって、現在規定されている副業・兼業制限規定は多くの場合、無効又は一部無効であり、もし従業員が兼業をしても、原則としてこれを禁止したり懲戒を課したりすることは難しい。
  • つまり、既にほとんどの副業・兼業は法的に認められている。

出典:内閣府会議資料「副業・兼業に関する法的課題」

法的見解の前提にある日本国憲法で保障される国民の権利

前段では、副業制限に関する裁判例や法的見解を紹介しました。

判例や法的見解から分かることは、

合理的な理由があれば副業制限してもいいけど、基本的に副業はOKとされなければなりませんよ!一律禁止は無効です!

ということです。

これらの判決・法的見解の考え方の背景には、日本の最高法規である『日本国憲法』の国民の権利が尊重されているようです。

日本国憲法の第22条第1項では「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と規定されています。

国民には、自身が従事する職業を決定する自由その職業を遂行する自由が保障されているのです。

日本国憲法

〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする

〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

日本国憲法では”職業選択の自由”が保障されています。これを制限するには相当な理由が必要なんですね。

憲法が最上位の法規だから、法律や規則よりも重視される考え方ってことだよね?


一方で、日本国憲法でも裁判例でも「公共の福祉に反しない限り」合理的な理由がない限り」という条件がありました。

それでは、使用者側が副業を制限できる「合理的な理由」にはどのようなことが考えられるのでしょうか?


<注意>副業を制限できる合理的な理由

日本国憲法や法的見解では、「公共の福祉に反しない限り」「合理的な理由がない限り」と条件付きの権利が示されています。

それでは、使用者側が副業制限できる”合理的な理由”とは、どのようなことが当てはまるのでしょうか?

”副業を制限できる合理的な理由”は、厚生労働省が公表している『副業・兼業の促進に関するガイドライン』に記載されています。

簡単にいうと、

本業に悪影響を及ぼすほどの副業は許容できないよ!

ということですね!

副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、

労務提供上の支障がある場合
業務上の秘密が漏洩する場合
競業により自社の利益が害される場合
自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合に該当する場合

と解されている。

厚生労働省:『副業・兼業の促進に関するガイドライン』

自身が社長になった立場で考えれば当然と言えば当然です!社長の立場から考えれば本業を疎かにする従業員なんてイヤですもんね!

逆に悪影響を及ぼさなければ、許容されなければならないんだね


ちなみに、「④信頼関係を破壊する行為がある場合」について、「会社に悪影響を与えずに行った副業だけでは、信頼関係を破壊したとまでいうことはできない」とされた判例があります。

原告らが行った本件アルバイト行為の回数が年に1,2回の程度の限りで認められるにすぎないことに、証拠及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、原告らのこのような行為によって被告の業務に具体的に支障を来したことはなかったこと、原告らは自らのこのような行為について会社が許可、あるいは少なくとも黙認しているとの認識を有していたことが認められるから、原告らが職務専念義務に違反し、あるいは、被告との間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできない。

十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)
出典:厚生労働省:副業・兼業に関する裁判例

副業制限に抵触しないために絶対順守すること

過去の判例や法的見解から

副業の一律禁止は無効!合理的な理由がない限り副業は認められるべき

であることが分かりました。

この情報をもとに、個人の権利として「副業申請」または「無許可で副業」という判断をする方もいるでしょう。

しかし、「本業に悪影響を及ぼす場合は、副業制限に抵触する」という見解も示されているかぎり、例えば、法令に違反しないこと、労働者の3大義務である職務専念義務・秘密保持義務・競業避止義務に違反しないこと、など注意する必要があります。

具体的には、

  • 勤務時間中は本業に専念しましょう!
  • 睡眠不足・疲弊しすぎて本業のパフォーマンスに悪影響が出ないようにしましょう!
  • 本業の機密情報を外部に漏らしてはいけません!
  • 本業の勤務先と競合する会社への雇用や起業をしてはいけません!
  • プライベートでも違法行為をしてはいけません!

などの社会人として当然のことを気をつけなければなりません。

仮に副業制限に抵触した場合の処分の程度は、上記に挙げたような法令や職務専念義務・秘密保持義務・競業避止義務に違反していないかによって、大きく左右されることになります。

法的に認められていても無許可で副業することには一定のリスクはある

副業が法的に認められているからといって、無許可で堂々と副業することには一定のリスクがあるのも事実でしょう。

会社の中には、

  • 判例や法的見解を知らない
  • 事実(判例・法的見解)を認めようとしない
  • 嫉妬・妬みから嫌ってくる

このような上司や社員がいるのも現実としてあるでしょう。

また、成績・パフォーマンスが落ちれば、すぐに副業のせいにされそうです。

職場での無用な争いを避けるためには、

  1. 許可申請をして副業を行う
  2. 意味もなく広く公言しない(こっそり行う)

ことを留意するのが無難でしょう。

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まとめ

過去の裁判例をもとに、

  1. 基本的に副業はOKとされるべき
  2. 副業制限には「合理的な理由」が必要
  3. 本業に悪影響を及ぼすことは絶対NG

ということを紹介しました。

私がこれらの判例を知ったのは、厚生労働省のホームページを見たからです。

労働に関する行政のトップ機関が、前述の副業・兼業に関する裁判例を紹介していることに、厚生労働省の”副業解禁に対する並々ならぬ想い”を感じました。

副業解禁に向けてこれだけ国が後押ししてくれてるんですね!

心強い!

とはいえ、やはり勤務先に副業バレするのはオススメできません。上司や同僚にグチグチ言われそうですし、営業成績が落ちれば副業のせいにされそうです。

こっそり副業したい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

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