副業で収入を増やしたい…
でも会社の就業規則には『副業禁止』と書かれている…
このような理由から、副業をあきらめてしまう人は少なくありません。
一方で、
「会社の就業規則は絶対に守らなければならないの?」
「副業禁止には法的な効力があるの?」
と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、副業禁止の就業規則があるからといって、会社がどのような場合でも自由に副業を禁止できるわけではなく、「既にほとんどの副業・兼業は法的に認められている」という法的見解が示されています。
この記事では、副業禁止の就業規則にはどのような法的効力があるのか、法律の考え方を交えながらわかりやすく解説します。
「副業禁止だから絶対に無理」と思っている方も、まずは正しいルールを知ることから始めていきましょう。
- 既にほとんどの副業・兼業は法的に認められている
- 副業制限には「合理的な理由」が必要
- 本業に悪影響を及ぼす副業はNG
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※本記事は副業禁止規定の法的効力について解説するものであり、無許可の副業を推奨するものではありません。
内閣府会議資料が示す法的見解

内閣府の会議の中で
既にほとんどの副業・兼業は法的に認められている
という考え方が示されています。
その根拠となるのが、2023年12月に開催された内閣府の『第3回 働き方・人への投資ワーキング・グループ』で示された資料です。
上記の法的見解の背景にある法的根拠には、
- 労働法が適用される範囲
- 日本国憲法で保障された国民の権利
の2つがあります。
内閣府の会議資料の詳細は以下をご確認ください。
副業・兼業の一律禁止は無効
- 裁判例や学説においては、勤務時間以外の時間をどのように過ごすかは基本的に労働者の自由であることが繰り返し指摘されており、副業・兼業の禁止は原則として無効であると示されていた。
- 「会社の職場秩序に影響せず、かつ会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の副業・兼業は禁止の違反とはいえない」(菅野和夫「労働法(第12版)」)。
- 「労働時間外の時間をどのように利用するかは労働者の自由であり、その時間に自己の労働力を利用する自由も職業選択の自由(憲法22条1項)によって保障されている。したがって、兼職は原則として労働者の自由である」(土田道夫「労働契約法(第2版)」)
- したがって、現在規定されている副業・兼業制限規定は多くの場合、無効又は一部無効であり、もし従業員が兼業をしても、原則としてこれを禁止したり懲戒を課したりすることは難しい。
- つまり、既にほとんどの副業・兼業は法的に認められている。
厚生労働省『副業・兼業の促進に関するガイドライン』で紹介された判例

厚生労働省が作成・公表している『副業・兼業の促進に関するガイドライン』資料では、裁判例を踏まえた考え方として、
就業時間外の自由利用を原則とし、労務提供や企業秩序に支障がない限り副業の全面禁止は合理性を欠く
という趣旨が示されています。
つまり、会社が就業規則で副業禁止としていても、それだけであらゆる副業を一律に禁止できるとは考えられていません。
この考え方を理解するうえで、特に参考になる裁判例が次の2つです。
- 東京都私立大学教授事件
(東京地判平成20年12月5日) - マンナ運輸事件
(京都地判平成24年7月13日)
① 東京都私立大学教授事件

この裁判では、勤務時間外の私的な時間に行う活動については、
形式的に副業許可制へ違反していたとしても、本業への支障や勤務先への悪影響がない程度の副業であれば、実質的には就業規則違反とは評価すべきではない
という考え方が示されました。
言い換えれば、重要なのは「会社の許可を得たかどうか」だけではなく、副業によって本業や会社にどのような影響が生じたかという点です。
判決では以下のように述べられています。
兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから、兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼職(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。
東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)
出典:厚生労働省:副業・兼業に関する裁判例
② マンナ運輸事件

マンナ運輸事件でも、
労働者は就業時間外の時間を自由に利用できることが原則であり、会社が副業を制限するには合理的な理由が必要である
という考え方が示されています。
つまり、会社が「副業禁止」と定めているだけでは足りず、本業への支障や企業秩序の維持など、制限する合理的な理由が求められるということです。
具体的には以下のように述べられています。
労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許されなければならない。
もっとも、労働者が兼業することによって、労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるものと解するのが相当である。
マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)
出典:厚生労働省:副業・兼業に関する裁判例
法的見解の背景にある「日本国憲法」で保障される国民の権利

ここまで紹介してきた法的見解や判例は、単独で存在しているものではありません。
その根底には、日本の最高法規である日本国憲法が保障する国民の権利という考え方があります。
特に、副業との関係で重要なのが、次の3つの条文です。
- 第13条「幸福追求権」
- 第22条「職業選択の自由」
- 第12条「公共福祉性」
日本国憲法第13条「幸福追求権」
憲法第13条では、国民一人ひとりが幸福を追求する権利を持つことが定められています。
日本国憲法
〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
働き方や人生設計、お金の稼ぎ方も、この幸福追求の一部と考えられています。
そのため、勤務時間外のプライベートな時間をどのように過ごすかは、原則として個人の自由が尊重されるべきものです。
日本国憲法第22条「職業選択の自由」
また、憲法第22条第1項では、職業選択の自由が保障されています。
日本国憲法
〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
これは、「どの職業に就くか」だけでなく、自らの意思で仕事を選び、働く自由も含む重要な権利です。
副業や兼業も、この職業選択の自由と深く関わるものと考えられています。
日本国憲法第12条「公共福祉性」
もっとも、憲法上の権利は無制限ではありません。
日本国憲法第12条では、国民の自由や権利は公共の福祉のために利用する責任があることが定められています。
日本国憲法
〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
副業に当てはめると、本人の自由が尊重される一方で、その自由によって会社や社会に重大な不利益を与えてはならないという考え方です。
日本国憲法では”幸福追求権”や”職業選択の自由”が保障されています。これを制限するには相当な理由が必要とされています

日本国憲法は日本の最上位法規のため、当然ながら法律や規則よりも尊重される考え方です
会社が副業を制限できる「合理的な理由」とは


ここまで解説してきたように、日本国憲法や裁判例では、副業をする自由は尊重されています。
しかし、その考え方には共通して
「公共の福祉に反しない限り」
「合理的な理由がない限り」
という条件が付いています。
それでは、会社が副業を制限できる「合理的な理由」とは、具体的にどのようなケースを指すのでしょうか?
この点については、厚生労働省が公表している『副業・兼業の促進に関するガイドライン』で考え方が示されています。
結論から言えば、
本業に悪影響を及ぼすような副業については、会社が一定の制限を設けることに合理性が認められる
ということです。
ガイドラインでは、主に次の4つのケースが挙げられています。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、
① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
に該当する場合と解されている。
4つのケースの具体例を紹介します。
労務提供上の支障がある場合
副業による長時間労働や睡眠不足などで、本業の勤務に支障が出るケースです。
例えば、副業の影響で遅刻や欠勤が増えたり、業務中の集中力が著しく低下したりする場合には、会社は本業への影響を理由として副業を制限できる合理的な理由となります。
業務上の秘密が漏洩する場合
勤務先の営業秘密や顧客情報、技術情報などが、副業を通じて外部へ漏れる恐れがあるケースです。
企業には重要な情報を守る利益があるため、このようなリスクがある副業は制限される合理的な理由となります。
競業により自社の利益が害される場合
勤務先と競合する会社で働いたり、自ら競合する事業を行ったりするケースです。
会社の顧客やノウハウを利用して競争関係になるような副業は、会社の利益を害する可能性があるため、制限される合理的な理由となります。
自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
副業を通じて会社の社会的信用を著しく傷つけたり、会社との信頼関係を壊したりするケースです。
例えば、違法行為や反社会的な活動に関わる副業などは、制限される合理的な理由となります。
なお、「会社に悪影響を与えずに行った副業だけでは、信頼関係を破壊したとまでいうことはできない」とされた判例があります。
原告らが行った本件アルバイト行為の回数が年に1,2回の程度の限りで認められるにすぎないことに、証拠及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、原告らのこのような行為によって被告の業務に具体的に支障を来したことはなかったこと、原告らは自らのこのような行為について会社が許可、あるいは少なくとも黙認しているとの認識を有していたことが認められるから、原告らが職務専念義務に違反し、あるいは、被告との間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできない。
十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)
出典:厚生労働省:副業・兼業に関する裁判例
重要なのは「副業の内容」
副業制限の合理的理由に共通しているのは、「副業そのもの」ではなく、「副業によって会社に具体的な不利益が生じるかどうか」が重要という点です。
つまり、会社は「副業だから」という理由だけで自由に禁止できるわけではありません。
一方で、本業への支障や企業の利益を害するような副業については、合理的な理由に基づいて制限できる可能性があります。
副業禁止の法的効力を正しく理解するためには、「副業は禁止されているか」という視点だけでなく、「その副業が会社にどのような影響を与えるのか」という視点で考えることが大切です。
自身が社長になった立場で考えれば当然と言えば当然です!社長の立場から考えれば本業に悪影響を及ぼす従業員なんてイヤですよね



逆に悪影響を及ぼさなければ、許容されなければならないということ
副業制限に抵触しないために絶対順守すること


ここまで解説してきたように、副業に関する法的見解や判例は、労働者の自由を尊重する方向で整理されています。
この内容を知ると、
「会社に副業を申請してみよう」
「就業規則に副業禁止と書かれていても、無許可で副業を始めても問題ないのでは?」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、権利だけを根拠に判断するのは注意が必要です。
なぜなら、「副業をする自由」は本業への誠実な勤務を前提として認められるものだからです。
副業を始める際は、労働者として会社に対して負っている義務にも十分配慮する必要があります。
特に、次のような点には注意しましょう。
- 職務専念義務
-
副業による疲労や睡眠不足で、本業の業務・パフォーマンスに支障をきたさない、本業の勤務時間中に副業(軽作業や情報収集を含む)をしないこと
- 秘密保持義務
-
勤務先の営業秘密や顧客情報、社内情報を副業で利用したり、外部へ漏らしたりしないこと
- 競業避止義務
-
勤務先と競合する事業を行い、会社の利益を害するような副業をしないこと
- 信用失墜行為の禁止
-
違法行為や社会的信用を損なう行為など、会社の名誉や信頼を傷つけるような副業をしないこと
これらは、厚生労働省の『副業・兼業の促進に関するガイドライン』で示されている「副業を制限できる合理的な理由」とも重なる重要なポイントです。
法的に認められていても「どう行動するか」は慎重に考えよう


ここまで解説してきたように、法的見解や判例を見ると、副業は原則として認められる方向で考えられています。
しかし、「法的に認められている」ことと、「会社で何の問題もなく受け入れられる」ことは必ずしも同じではありません。
たとえ法律上や判例上の考え方が自分に有利であったとしても、無許可で堂々と副業を行うことには一定のリスクがあるのも事実です。
会社は法律だけで動く組織ではなく、人と人との関係で成り立っています。
そのため、職場には、
- 副業に関する判例や法的見解を知らない人
- 法的な考え方があっても「会社のルールが絶対」と考える人
- 副業に対して否定的な価値観を持つ人
がいることも珍しくありません。
また、副業とは直接関係がなくても、本業で成績が一時的に落ちれば、「副業をしているからではないか」と受け取られてしまう可能性もあります。
もちろん、そのような評価が常に正当とは限りません。しかし、現実の職場では、法律だけでは解決しにくい人間関係や職場環境の問題も存在します。
トラブルを避けるための現実的な考え方
副業を長く安心して続けるためには、「法的に問題がないか」だけでなく、「職場との不要なトラブルを避けられるか」という視点も重要です。
職場での無用な争いを避けるためには、
- 許可申請をして副業を行う
- 意味もなく広く公言しない(こっそり行う)
ことを留意するのが無難でしょう。
就業規則で副業の申請制度が設けられているのであれば、まずはそのルールに沿って許可申請を検討する。
また、副業について必要以上に職場で話題にしたり、不特定多数へ積極的に公言したりすると、思わぬ誤解や嫉妬、不要な詮索を招くこともあります。
副業は、本業に支障がなく、法令や会社の正当な利益を害しない範囲で、落ち着いて取り組むことが大切です。
\ こっそり副業したい方向けの情報 /
まとめ


「会社が副業禁止だから、副業できない」
そのように考えていた方も、本記事を通してイメージが大きく変わったのではないでしょうか。
本記事のポイントを振り返ると、次の3点です。
- 既にほとんどの副業・兼業は法的に認められている
- 副業制限には「合理的な理由」が必要
- 本業に悪影響を及ぼす副業はNG
私自身、これらの法的見解や判例を知るきっかけになったのは、厚生労働省のホームページで公開されている『副業・兼業の促進に関するガイドライン』でした。
判例を引用しながら副業・兼業の考え方を丁寧に整理し、公表していることからも、国として副業・兼業を適切に普及・促進していこうという強い姿勢がうかがえます。
副業解禁に向けてこれだけ国が後押ししてくれてるのですね!



心強い!
一方で、「法的に認められている」という事実だけを根拠に行動するのはおすすめできません。
副業を安心して長く続けるためには、次のような点にも十分配慮しましょう。
- 職務専念義務・秘密保持義務・競業避止義務など、労働者としての義務を守ること
- 会社に副業申請制度がある場合は、できる限りルールに沿って許可申請を行うこと
- 職場で必要以上に副業を公言せず、無用な誤解やトラブルを避けること
法律や判例を知ることは、自分の権利を守るために大切です。しかし、それ以上に重要なのは、本業への誠実な姿勢を保ちながら、副業を賢く継続することです。
ぜひ本記事で紹介した考え方を参考に、法的なルールと会社との良好な関係の両方を意識しながら、自分に合った副業をスタートしてみてください。










