公務員の家族名義のアフィリエイトは問題ありますか?
副業を制限されている公務員が、勤務先にバレずに副収入を得る方法として、「家族名義でアフィリエイトをしよう」と考える方も多くいますが、「無報酬の家業の手伝い」には注意点があります。
もしNG方法による家族名義の副業がバレた場合、勤務先で処分を受けたり配偶者に迷惑をかける可能性があります。
この記事では、公務員が副業制限に反しない方法で行う「家業の手伝い」と「家族名義アフィリエイト」の注意点について解説します。
公務員の家族名義の副業は大丈夫?
法律により副業が制限されている公務員でも、「無報酬の家業の手伝い」は無許可で行うことができます。
本人は報酬を得ていないので、原則として副業とはみなされません。
例えば、公務員が休日に実家の居酒屋の手伝いをしても無報酬なら問題ありませんし、実家の農業の手伝いだって平気です。
仮にこれらの活動がNGとみなされるのであれば、ボランティア活動は一切できないことになります。法律ではそこまで制限されていません。プライベートまで制限されるような法律なら人権侵害、憲法違反です。
実家の居酒屋や農業の手伝い同じように、「無報酬・家族名義」であればアフィリエイトやYouTube、転売・せどりなどを実施できます。
ただし、NGとなるケースもあるので注意が必要です。これより家族名義の副業のNG例を紹介します。
家族名義の副業のNG例
家族名義の副業においても、以下に当てはまる場合はNGとなるので注意してください
家族名義の副業のNG例
- 組織の役員の立場にある(役員兼業)
- 会社経営の立場にある(自営兼業)
- 報酬を得る(有報酬兼業)
- 公務員の義務違反に抵触する場合
- 信用失墜行為の禁止
- 秘密保持義務
- 職務専念義務
公務員の副業制限の範囲は、①役員兼業、②自営兼業、③有報酬兼業の3つですが、①及び②についてはたとえ無報酬であったとしてもNGとされています。
(参考:国家公務員の兼業について(概要))
したがって、家族名義であったとしても実質的に全ての業務を自身が担っている場合は、それが無報酬の作業だとしても「自営兼業」に該当してNGとなるので注意が必要です。
税法上においても法令に抵触する可能性があります(詳細は後述します)。
「役員兼業」や「自営兼業」が無報酬でもNGとされている理由は、癒着や賄賂などの不正を防止するためです。
「無報酬の家業の手伝い」がOKとなるのは、あくまで手伝いとして特定の業務を部分的に手伝っている程度のニュアンスとなるでしょう。
副業に当てはまらなくてもNGとなること
公務員の義務違反は重処分!!
副業制限に該当するか否かに関わらず、公務員の義務に違反した場合は、単なる副業バレよりもずっと重い処分が下されます。
「信用失墜行為の禁止」「秘密保持義務」「職務専念義務」の3つは、国家公務員法と地方公務員法のそれぞれの法律に明記されている公務員の遵守事項となります。
国家公務員法 | 地方公務員法 | |
---|---|---|
信用失墜行為の禁止 | 第99条 | 第33条 |
秘密を守る義務 | 第100条 | 第34条 |
職務に専念する義務 | 第101条 | 第35条 |
公務員の懲戒処分は「戒告」「減給」「停職」「免職」の4種類です。
無許可の副業がバレた場合は「許可を怠った」とみなされて、比較的軽い「減給」又は「戒告」の処分となりますが、公務員の義務違反に抵触した場合は懲戒解雇の可能性がある非常に重い処分となります。
人事院 懲戒処分の指針について
(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠
営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
公務員の義務違反の具体的なNG例は、
- 公序良俗に反する動画や記事を投稿する
- 嘘の理由で休暇を取得して副業の作業をする
- 本業で知り得た情報を漏洩する
- 勤務時間中に副業の作業や株取引をする
などが挙げられます。
例えば、株式投資やFXは副業ではなく単なる資産運用で公務員も行うことが可能ですが、勤務中に株取引をしたり、インサイダー取引をした場合は重い処分が科されます。
公務員の義務違反は絶対にしてはいけません!
家族名義の副業は本当にバレないの?
副業がバレる理由はいくつかありますが、その中で家族名義にすることで副業バレを回避できるのは「副収入にかかる住民税の納付」についてのみです。
例えば、アフィリエイトブログを妻の名義で始めた場合、そのブログ収入は夫の所得ではなく、名義としている妻の所得になります。
そのため住民税の支払い義務は妻にあります。
夫には副収入にかかる納税の義務は発生しないため、「副収入にかかる住民税の納付」の観点では、副業バレの心配はなくなります。
(実質所得者課税の原則により例外あり。詳細は後述します)
ただし、家族名義の副業であっても他の要素で副業を疑われる可能性は当然残されています。
例えば、スマホやPCの画面を覗かれたり、LINEやSNS投稿の誤送信などで、副業の作業をしていること自体がバレる可能性はあります。
とはいえ、副業を怪しまれたとしても副収入がないので「副業はしていません」と言い切れますし、副業バレの理由はいずれも自身の不注意がなければ全て回避可能です。
特にアフィリエイトは他の副業と比べて副業バレのリスクは相当低いです。
副業バレの主な注意事項として
- 匿名で行う
- 副業していることを他言しない
- 画像・動画の内容に注意する
- 勤務先で副業の作業をしない
- スマホ・SNS設定に注意する
などの一般的なことを認識していれば副業バレの可能性は非常に低いでしょう。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
家族名義の副業の注意点
家族名義で副業する際に留意しなければならない事項が5つあります。
以下に5つの留意点について解説していますので、メリット・デメリットとリスクを天秤にかけてアフィリエイトを実施するかどうかご検討ください。
事業の主体者=責任者
家族名義で副業を行うということは、事業の主体者はその名義の家族であって、事業責任がその家族に及ぶということです。
アフィリエイトでは、さまざまな法規制(景品表示法、著作権法、特定商取引法など)を遵守しながら事業を行う必要がありますが、家族名義で副業すると、法令違反をした場合の影響が、名義となる家族に及ぶことになります。
もちろん自身の名義でアフィリエイトをする場合も法令遵守は当然の姿勢となりますが、無知や不注意によって万が一、法的な責任を負わなければならなくなった場合に家族に迷惑がかかります。
そのため、家族名義の副業をする場合は、家族にも相談した上で慎重に行うべきでしょう。
実質所得者の取扱い
税法上の実質所得者課税の原則により、家族名義の副業による所得であったとしても、名義である家族ではなく事業主体本人の所得とみなされる可能性があります。
つまり、妻名義の副業をしていたとしても場合によっては夫の所得とみなされて、夫に納税の義務が生じる可能性があるということです。
実質所得者課税の原則とは、その名義が単なる名義貸しであって、事業の経営主体や事業から生ずる経済的利益の実質的・最終的な所得者が別にある場合、実質的な所得者に租税を負担すべきという税制上の原則です。
国税庁《実質所得者課税の原則》
12-2 事業から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その事業を経営していると認められる者(事業主)がだれであるかにより判定するものとする。
12-5 生計を一にしている親族間における事業の事業主がだれであるかの判定をする場合には、その事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が当該事業の事業主に該当するものと推定する。
出典:国税庁<第3章 所得の帰属に関する通則
したがって、家族名義であったとしても実質的に全ての業務を自身が担っている場合は、それが無報酬の作業だとしても「自営兼業」に該当してNGとなると同時に、税制上においても実質所得者とみなされて納税の義務が発生する可能性があるため注意が必要です。
再掲となりますが、「無報酬の家業の手伝い」がOKとなるのは、あくまで手伝いとして特定の業務を部分的に手伝っている程度のニュアンスとなるでしょう。
社会保険・配偶者控除・扶養手当
配偶者の収入・所得が増えると、被扶養者として享受されていた様々なメリットが失われます。
被扶養者として享受される制度は、主に以下の3つです。
- 社会保険(年金・健康保険)
- 税金の配偶者控除
- 勤務先の扶養手当
- 社会保険(年金・健康保険)の被扶養者
-
被保険者の収入により生計を維持されている配偶者の年間収入が130万円未満の場合は、社会保険(年金・健康保険)の被扶養者となります。
年間収入が130万円を超えると、年金や健康保険料を自身で納付しなければなりません。
以下、条件であると年間50万円ほどの負担増となります。
- 国民年金保険料:1カ月あたり16,980円
(令和6年度) - 国民健康保険料:1カ月あたり24,700円
(参考:令和6年度・新宿区・40から64歳・総所得金額200万円の場合)
- 国民年金保険料:1カ月あたり16,980円
- 配偶者(特別)控除
-
配偶者の所得が少ない場合、税制上の優遇措置として「配偶者(特別)控除」という制度が適用されます。
1人の給与で家族を養っていく世帯のために税負担を軽くする制度ですね。
配偶者控除は、配偶者の給与収入又は合計所得金額によって適用可否が判断されますが、合計所得金額が133万円を超えると配偶者控除制度が適用されません。
配偶者(特別)控除の適用条件- 納税者の合計所得金額が1,000万円以下
かつ
- 配偶者の合計所得金額が
48万円以下(配偶者控除) 又は
48万円超え133万円以下(配偶者特別控除)
(※給与収入の場合の条件は割愛)
年収にもよりますが、配偶者控除を利用すると税金が年間5~11万円ほど安くなります。
- 扶養手当
-
配偶者の年間収入が130万円未満であれば扶養手当が支給されます。
年間収入が130万円以上となると扶養手当が支給されません。
国家公務員であれば月額6,500円(年間78,000円)が支給されています。
なお、公務員の配偶者手当(扶養手当)は、2025年度から段階的に廃止されることが人事院勧告で決定しているため、あまり意識しなくても良いでしょう。
配偶者の被扶養者の制度を紹介しましたが、家族名義の副業をして配偶者の収入が一定の金額(一つの目安として年間130万円と考えればよいでしょう)を超えると、社会保険の被扶養者や配偶者控除、扶養手当が適用されなくなる恐れがあることを認識しておきましょう!
贈与税
年間110万円を超える財産の贈与には「贈与税」がかかります。夫婦間であっても(生活費や教育費などの一部の用途を除き)例外ではありません。
したがって、副収入で得た金額を配偶者名義の口座から本人名義の口座に移し替えたときに、贈与とみなされて贈与税が発生する可能性があるので注意しましょう。
贈与税の金額規模は下表のとおりです。
基礎控除後の課税価格 (贈与額から110万円を引いた額) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ― |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超え | 55% | 400万円 |
家族名義で得た副収入を「生活費」として使用するなど工夫して生計を立てましょう。
夫婦で副業禁止とされている場合
夫婦で副業制限のある勤務先で勤めている場合、配偶者も副業が制限されているため、家族名義で副業するメリットはありません。
特に夫婦で公務員の場合は、家族名義の副業は諦めて、副業に該当しない範囲でお金を稼ぎましょう。
家族名義のアフィリエイトブログの実施イメージ
公務員が家族名義でアフィリエイトをする場合の具体的な実施イメージを見ていきましょう。
名義人
アフィリエイトブログを運用する際のそれぞれのサービスの名義は一致していなければなりません。
- ブログ名義:家族
- 収益化(ASP)名義:家族
- 口座名義:家族
例えば、ブログ名義人を「夫」にして、アフィリエイト広告の仲介業者であるASP(アフィリエイト サービス プロバイダー)への登録と口座名義だけを「妻」にするといった運用は許容されていません。
家族名義の副業を行うのであれば、いずれも同一名義で登録しましょう。
おすすめのブログサービスとASP
アフィリエイトをするならブログサービスは収益化の制限がない「WordPressブログ」一択です。
WordPressブログの利用は無料ですが、データを保管するためのレンタルサーバーの契約が別に必要です。
なお、WordPressブログの開設は、レンタルサーバー会社の手続きと同時に行うことが可能です(10分程度)。
主なレンタルサーバー会社
レンタルサーバー各社の主な特徴を下表にまとめました。
エックスサーバー | ConoHa WING | mixhost | |
---|---|---|---|
通常価格 | 1,100円 | 1,452円 | 2,178円 |
キャンペーン価格 | 550円 | 941円 | 968円 |
ドメイン無料特典 | 2つ | 2つ | 1つ |
安心感 | 長期運営実績/ シェアNo.1 | 大手GMOグループが運営 | 顧客調査で多くの1位評価を獲得 |
特徴 | 最安値 | 分かりやすい操作画面 | アダルトOK |
アフィリエイト広告の仲介業者であるASPも紹介します。
初心者の方は審査なしで登録できる以下ASPから登録すればよいでしょう。
主なASP
作業担当
アフィリエイトは「記事を執筆して広告を紹介する」だけなのですが、その裏で多くの作業が必要です。必要な作業をせずにお金を稼げるほど簡単な事業ではありません。
アフィリエイト業界には副業者だけでなく、専業アフィリエイターや企業もいます。
彼らに勝つためのビジネス戦略が必要で、アクセス増のためのSEO対策(キーワード選定など)やセールスライティングを実施しなければなりません。
- キーワード選定
- 検索意図の深堀り
- 競合分析(上位サイト分析)
- 記事構成
- 記事執筆
- 画像の選定・作成
- 装飾・入稿
- SNS投稿
上記に挙げた作業をすべて自身が行ってしまうと、公務員の副業制限や税法上の実質所得者課税の原則によりNGとなる場合があります。
家族名義の副業とするのであれば、あくまで手伝いとして特定の業務を部分的に手伝っている程度となるように役割分担して行いましょう。
それでも一歩踏み出せない方向けの実施方法
これまで家族名義の副業について紹介してきましたが、それでも副業バレが心配で一歩踏み出せない方のために、完全無欠のアフィリエイトの試し方があります。
収益化せずに試してみる
「収益化しない=副収入を得られない」ということなので作業を行うメリットを感じられないかもしれませんが、アフィリエイトではブログやSNSにアクセスを集めるだけでも数ヶ月はかかります。1年程度は収益化できないことが普通です。
その期間を利用して1年程度は媒体に広告を掲載せずに、アクセスを集められるのか、紹介する広告があるのか、自身がアフィリエイトで副業できそうかどうかを検証してみるのです。
その間はいくらブログやSNSをしていても副業にはなりません。育児ブログを執筆しても収益化しなければただの日記と同じですよね?それと同じ要領です。
もしブログにアクセスを集められるのであれば、収益化はすぐにできます。
そして収益化を試すのも、アクセスを集めたら単発的に広告を貼り付けて収益化してみれば良いのです。
収益化しても副業とみなされないこともある
報酬を得たとしても、それが単発で行われる場合は副業とはみなされません。
(参考:国家公務員の兼業について)
単発的な講演や雑誌等への執筆で報酬を得る場合は、「定期的又は継続的に従事する」ことに当たりません。
出典:国家公務員の兼業について(概要)
国家公務員の兼業について人事院資料のFAQには、以下のように紹介されています。
- 問4 YouTubeやブログ等でアフィリエイト収入を得ることはできますか。
基本的に、アフィリエイト収入を得ることだけをもって兼業には該当しません。
しかしながら、営利目的や投稿の継続性・反復性の有無、規模(主には収入額)等によっては承認又は許可が必要な兼業に該当する可能性があります。出典:一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)
令和6年6月 内閣人事局・人事院
収益化せずにアクセスが確保できるか試してみる。
アクセスを集められたら広告を貼り付けてみて単発的に収益化を試してみる。
その他
家族名義にすることで「副収入にかかる住民税の納付」による副業バレを回避できますが、そもそも「副収入にかかる住民税の納付」についても、確定申告で間違いなく手続きすれば勤務先にはバレません。
もしバレたとしても言い訳の余地はあります。
家族名義の副業も含めて、どこまで副業バレを心配するかですね。
- 副業バレのリスクは自身の不注意がなければ相当程度低くすることが可能
- もし副業を疑われても言い訳の余地はある
- もし処分となっても減給・戒告程度
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